【情シス向け】EDRとは?機能や必要性、EPPとの違いなどを徹底解説

サイバーセキュリティの脅威は、企業の存続そのものを脅かす可能性を持ち、この現実は日々のビジネス運営に深刻な影響を及ぼしています。CrowdStrikeの2023年のグローバル脅威レポートによると、攻撃者は攻撃をより迅速かつ洗練された方法で実施し、サイバー攻撃の平均完了時間はわずか84分とのこと。また、攻撃の71%はマルウェアを使用しない形態で行われており、クラウドの悪用は95%増加しました​​​​​​。

このような状況の中で、EDR(Endpoint Detection and Response)システムの重要性はますます高まっています。EDRはエンドポイントをリアルタイムで監視し、脅威を迅速に検出し、対応することで、企業のデジタル資産を保護する役割を果たします。

本記事では、EDRの基本概念や仕組み、機能、選定ポイントなどをわかりやすく解説します。

EDRとは

EDR(Endpoint Detection and Response)は、コンピューターやサーバーなどのエンドポイント(端末)を監視し、サイバー攻撃を検出して対応するシステムです。簡単に言えば、企業のネットワークに接続された各端末を見守り、怪しい動きを見つけたらすぐに対処する警備員のようなものです。

機械学習を利用して正常な動作パターンを学習し、それから逸脱する行動を検出することで、未知の脅威やゼロデイ攻撃にも対応可能です。さらに、脅威の検出後、EDRシステムは迅速な対応を実施し、セキュリティインシデントの解決を支援します。

たとえば、最近のGartnerのレポートでは、EDRソリューションがサイバー攻撃の検出と対応時間を平均50%削減したと報告されています。ここからは、EDRと従来のアンチウイルスとの異なる点、EPPとの違いを見ていきましょう。

EDRが従来のアンチウイルスと異なる点

EDRは、従来のアンチウイルスソフトウェアとは根本的に異なります。従来のアンチウイルスがシグネチャ(特定の特徴)ベースの検出に重点を置いていたのに対し、EDRは行動ベースの検出機能を持ち、エンドポイントの行動パターンを分析します。これにより、EDRは未知の脅威やゼロデイ攻撃を特定し、迅速な対応を可能にします。

例として、2018年に起きたWannaCryランサムウェア攻撃は、多くのアンチウイルスソリューションを回避しましたが、行動ベースの分析を行うEDRシステムはこのような攻撃を効果的に検出し対応しています。

EDRは、その高度な分析能力とリアルタイムの対応能力により、現代の複雑なサイバーセキュリティ環境における不可欠なツールとなっています。この技術を導入することにより、企業はサイバー攻撃に対する防御を大幅に強化し、ビジネスの持続可能性を高められるでしょう。

EPPとの違い

EPP(Endpoint Protection Platform)は、伝統的なアンチウイルス、ファイアウォール、侵入防御システムなどを一元化したソリューションです。一方、EDRはこれらの機能に加えて、より高度な脅威検出と対応機能を提供します。

EPPは一般的な脅威から保護するための基本的な防御策を提供するのに対し、EDRは脅威がネットワーク内に侵入した後の対応と分析に特化しています。これにより、EDRはEPPの機能を補完し、企業のセキュリティ体制をより強固なものにします。

EDRの仕組みと構成要素EDRシステムの主要なコンポーネント

EDRの理解を深めるために、主な構成要素とシステムを見ていきましょう。

主要構成要素

エージェント:企業の各エンドポイント(コンピューター、サーバーなど)にインストールされるソフトウェアです。エージェントは、エンドポイントで発生するすべての活動(ファイルのダウンロード、ネットワークの使用状況など)を監視します。

集中管理サーバー:監視データは集中管理サーバーに送信され、分析されます。このサーバーは、データを収集し、分析するための中心的な役割を果たします。

データベース:エンドポイントからのデータはデータベースに保存され、長期的な分析やレポート作成のために使用されます。

分析エンジン:機械学習アルゴリズムや行動ベースの分析を利用して、異常な行動や潜在的な脅威を識別します。

レスポンスツール:脅威が検出された場合に自動的に実行される対応措置です。たとえば、感染したファイルの隔離や、攻撃を受けた端末のネットワークからの切断などが行われます。

EDRの仕組み

EDRシステムの仕組みは、主に以下のステップで構成されます。

  1. データ収集:EDRは各エンドポイントに設置された「エージェント」と呼ばれるソフトウェアを通じて、端末の活動(ファイルの開閉、ネットワークの利用など)を監視し、データを収集します。
  2. データ送信:収集したデータは、企業内のサーバーやクラウドにある集中管理システムに送信されます。これにより、多くの端末からの情報を一元的に管理できます。
  3. 分析:集中管理システムに送信されたデータは、分析エンジンによって処理されます。ここで、機械学習などの技術を用いて、通常の動作パターンと異なる、怪しい行動がないかを監視します。
  4. 警告と対応:異常な振る舞いや脅威が検出されると、システムはセキュリティ担当者に警告を出します。必要に応じて、システムが自動で対応措置(危険なファイルの隔離や攻撃を受けた端末のネットワークからの切断)を行います。

EDR(Endpoint Detection and Response)の主な機能

EDRの主要な機能は以下の通りです。

リアルタイムの監視と脅威検出

EDRシステムは、エンドポイント上での活動をリアルタイムで監視し、異常な振る舞いや潜在的なセキュリティ脅威を検出します。これには、ファイルのダウンロード、プログラムの実行、ネットワーク通信などが含まれます。

行動ベースの分析

EDRは、エンドポイントの通常の行動パターンを学習し、そのパターンからの逸脱を識別することで、未知の脅威やゼロデイ攻撃を検出します。この分析は、機械学習技術を使用して行われ、時間とともにより精度が高まります。

詳細な記録とインシデントの追跡

エンドポイント上でのすべての活動を詳細に記録し、将来の分析やサイバー攻撃の追跡に使用します。

自動化された対応と修復

検出された脅威に対して自動的な対応を実行する能力を持っています。これには、マルウェアの隔離、システムの復元、パッチの適用などが含まれ、迅速な対処を可能にします。

自社に適したEDRの選定ポイント

この項では、自社に適したEDRの選定ポイントを見ていきましょう。

自社ニーズの特定

最初のステップは、自社のセキュリティニーズを特定することです。企業規模や業務の性質、データの機密性、既存のセキュリティツール、そして特に保護を要する情報の特定をしましょう。

また、セキュリティチームのリソースやスキルも考慮する必要があります。これらの要素を理解することで、どのタイプのEDRが自社に最適かを判断するための基礎が築かれます。

ソフトウェアのリサーチ

市場には多種多様なEDRソリューションが存在します。各ソリューションの機能、ユーザーインターフェース、導入の容易さ、サポート体制などをリサーチしましょう。また、各ソフトウェアの評判やユーザーレビュー、業界の専門家の意見も参考にすると良いでしょう。この段階では、幅広くソフトウェアをリサーチし、それぞれの強みと弱みを理解することが重要です。

比較

リサーチをもとに、様々なEDRソリューションを比較検討します。ここでは、次の点に注目してください。

●    機能性:必要なセキュリティ機能を提供しているか。リアルタイム監視、脅威検出、応答機能などが含まれているか。

●    コスト:ソフトウェアの価格が予算に合っているか。初期導入費用と継続的な運用コストも計算。

●    操作性:ITに精通した人材がいない場合、ユーザーインターフェースが直感的で使いやすいソフトウェアを選びましょう。

無料トライアルへの申し込み

多くのEDRプロバイダーは無料トライアルを提供しています。実際の業務環境でEDRソリューションを試すことで、機能や操作性の比較検証ができます。このステップでは、経営陣や意思決定者だけではなく、現場で実際にEDRを活用するメンバーに協力してもらい、各メンバーの意見を参考にすることが重要です。

最終選定

すべての情報とトライアルの評価をもとに、最終的な選定を行います。機能、コスト、操作性のバランスを見極めることが重要です。また、経営層やIT部門、セキュリティチームなど、関連するステークホルダーとの意思疎通を確保し、組織全体の合意を図りましょう。

ダークウェブの脅威と監視の重要性

EDRは、エンドポイントの監視と脅威の検出・対応に優れた能力を持っていますが、それだけではサイバーセキュリティのすべての側面をカバーすることはできません。特に、ダークウェブはサイバー犯罪者が活動する隠れた領域であり、ここでは新しい攻撃手法や漏洩したデータが頻繁に取引されています。

すさまじい速さで進化するサイバー攻撃の前では、完全にサイバー攻撃を防ぐ術はありません。だからこそ、被害の最小化を目指す対策も必要です。ダークウェブを監視すれば、情報漏えいの早期発見や新たな脅威の予測などができます。結果的に、被害の最小化、現在のセキュリティリスクを適切に評価し、迅速な対策を講じられるのです。

まとめ     

EDRシステムを導入することで、企業のセキュリティ力を大幅に高めることが可能です。EDRは、エンドポイントの監視、脅威の検出と対応、そしてセキュリティインシデントの追跡といった重要な機能を提供します。これらの機能により、EDRは未知の脅威やゼロデイ攻撃など、従来のセキュリティシステムでは対応が困難なサイバー攻撃に対しても、効果的に対処できます。

EDRの選定と導入においては、自社のニーズを正確に理解し、複数ソリューションを比較検討することが重要です。無料トライアルを利用して実際の環境でEDRをテストし、最終的な選定を行うことで、自社に最適なソリューションを選定できます。

ただし、EDRは強力なセキュリティツールですが、サイバー攻撃を100%防ぐことはできません。そこで定期的にダークウェブの監視し、情報漏えいの早期発見をして、被害を最小限に抑える対策を講じましょう。

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