セキュリティインシデントとは|種類や原因、対策などを徹底解説

デジタル化の進展は、企業や個人に新たな機会をもたらすと同時に、セキュリティリスクも増加させています。たとえば、Verizonの2020年のデータ侵害調査報告によると、データ侵害の大多数は金銭的動機によるもので、約70%が外部の攻撃者によるものでした。これは、サイバーセキュリティの複雑さと重要性を示しています。

セキュリティインシデントは、データ漏えい、システムへの不正アクセス、マルウェア攻撃など、さまざまな形態で発生します。各インシデントの特性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。本記事では、セキュリティインシデントの基本知識や種類、発生の原因、対策方法などを解説します。

セキュリティインシデントとは

セキュリティインシデントとは、情報セキュリティに関するポリシー違反や失敗、またはその脅威を指します。これには、機密情報の漏えい、システムへの不正アクセス、マルウェアによる被害など、さまざまな形態が含まれます。重要なのは、これらのインシデントが組織の業務に損害をもたらすリスクがある点です。

セキュリティインシデントは多岐にわたりますが、主要なタイプは以下の通りです。

●    マルウェア感染: ウイルスやトロイの木馬など、悪意あるソフトウェアによる攻撃。システムの乗っ取りやデータの破壊、データの盗難を引き起こす。

●    不正アクセス:セキュリティが破られ、外部の攻撃者がシステムやネットワークに侵入すること。データ盗難やシステム停止、データの改ざんなどが発生する。

●    情報漏えい:機密情報が意図せず外部に漏れる事件。内部者による過失や故意、外部からの攻撃によるものがある。


これらのインシデントは、企業の信頼性を損なうだけでなく、法的責任や経済的損失を引き起こすことがあります。次の項では、これらのインシデントの詳細な種類と特徴を見ていきます。

セキュリティインシデントの種類と特徴

セキュリティインシデントは、その発生源や影響の範囲に応じて、多様な形で現れます。それぞれのインシデントは独自の特徴を持ち、これを理解することが適切な対策を立てる上で不可欠です。

外部からの攻撃

外部からの攻撃とは、企業が外部の攻撃者によって標的とされるケースを指します。これにはサイバー攻撃が含まれ、たとえばハッキングにより機密情報が盗まれる、フィッシングによって従業員がだまされて重要な情報を提供してしまう、DDoS攻撃によりウェブサイトが利用不能に陥るなどの事例があります。

外部からの攻撃は企業の信頼性を損なうだけでなく、法的な責任や経済的な損失をもたらす可能性が高いです。そのため、セキュリティシステムの導入や従業員へのセキュリティ意識教育が重要となります。

自然災害や外部サービスによるもの

自然災害や外部サービスの障害も、セキュリティインシデントの一形態です。地震や洪水、火災などの自然災害によってデータセンターが損傷を受けたり、クラウドサービスやサードパーティプロバイダの障害によってビジネスが中断したりする事例があります。

これらのインシデントは、データの損失やサービスの中断に直結し、ビジネスの継続性に深刻な影響を及ぼします。このため、データのバックアップや災害復旧計画の策定、サービスプロバイダの選定といった予防措置が不可欠です。

組織内部での故意・過失によるもの

組織内部での故意または過失によるインシデントも無視できません。従業員の誤操作や過失が原因でデータが誤って削除される、設定ミスによってセキュリティホールが生じるなどのケースが該当します。

さらに、内部者による故意の不正行為により機密情報が漏えいすることもあります。このようなインシデントは、従業員の訓練や操作プロセスの改善、アクセス管理や内部監査の強化によって予防することが可能です。

セキュリティインシデントの事例2選

セキュリティインシデントの事例を詳細に分析し、その原因と影響を理解することで、より効果的な予防策を講じられます。ここからは、セキュリティインシデントの事例2選を見ていきましょう。

250万人の患者と従業員情報が流出

Norton Healthcareのデータ漏えい事件は、2023年5月に発生し、最大250万人の患者と従業員の個人情報が流出しました。この事件は、ランサムウェア攻撃によるもので、Norton Healthcareは当初、被害の範囲が確定していないため個別の通知を行えない状況でした。

しかし、その後の調査で、2013年5月7日から9日の間に未承認の第三者がネットワークに不正アクセスし、患者と従業員のデータを含むネットワークストレージデバイスに侵入していたことが判明しました​​。

漏洩したデータには、患者の氏名、連絡先情報、社会保障番号、生年月日、健康情報、保険情報、医療識別番号などが含まれていた可能性があり、一部の個人に関しては、運転免許証番号、その他の政府発行のID番号、財務口座番号、デジタル署名も含まれているとされています​​。

この事件に関連して、Norton Healthcareに対して少なくとも2件の集団訴訟が提起されました。これらの訴訟は、Norton Healthcareが患者の情報を適切に保護するための安全対策を実施しておらず、攻撃後の透明性の欠如を問題視しています。

また、被害者に対しては、クレジットモニタリングと身元盗用防止サービスを最大24ヶ月間無料で提供する措置が取られています​​。

病院が直面するダークウェブの脅威と監視が重要な理由

航空会社を狙ったランサムウェア攻撃

ボーイングの2023年11月のデータ侵害事件は、同社の部品および流通事業に影響を与える「サイバーインシデント」でした。このインシデントは、Lockbitサイバー犯罪グループによって公表されたもので、彼らはボーイングから「膨大な量」の機密データを盗んだと主張しました。]

Lockbitは、ボーイングが指定された日までに身代金を支払わなければ、オンラインでデータを公開すると脅迫しました。ただし、ボーイングはLockbitがこのインシデントの背後にいるかどうかについてはコメントを控えました。

ボーイングの部品および流通事業は、同社のグローバルサービス部門の一部であり、顧客への物流サポートを提供しています。このインシデントの影響を受けて、ボーイングの公式ウェブサイトの一部がダウンし、技術的な問題が発生したというメッセージが表示されました。

Lockbitは、2020年以降、1,700以上の米国組織を標的にした最も活発なグローバルランサムウェアグループの一つです。このグループは通常、被害者組織のシステムにランサムウェアを展開し、機密データを盗み、脅迫に使用します。

ランサムウェア専門家であるBrett Callow氏は、組織がサイバー犯罪グループに身代金を支払う場合でも、データが漏えいしないという保証は「ない」と述べています。


セキュリティインシデントの対応フロー

セキュリティインシデントへの対処プロセスは、迅速かつ効果的な管理を実現し、損害の最小化を目指すため重要です。このプロセスには、インシデントの識別、詳細な分析、戦略的な対応、迅速な復旧、そして評価と改善が含まれます。

  1. インシデントの識別:インシデント発生時、初めに迅速な識別と状況評価が求められます。
  2. 詳細な分析:原因と影響範囲を精密に分析し、戦略的対応計画を策定します。
  3. 戦略的な対応:計画に従い、影響を迅速に緩和し、業務影響を最小限に抑える対応を実施します。
  4. 迅速な復旧:復旧段階では、影響を受けたシステムやデータを元の状態に戻し、業務を正常化します。
  5. 評価と改善:インシデントの詳細なレビューを通じて、将来のリスク軽減のための改善策を導入します。

これらのステップを通すことで、セキュリティインシデントに対する組織の準備と対応能力を強化できます。

セキュリティインシデントの対策方法

セキュリティインシデントを予防し、その影響を最小限に抑えるための対策方法は多岐にわたります。効果的な対策を講じることは、企業が安全なセキュリティを維持し、信頼性を保つ上で極めて重要です。ここからは、主な4つの対策をご紹介します。

セキュリティ対策ツールやサービスの導入

ファイアウォール、侵入検知システム、アンチウイルスソフトウェアなどを活用して、外部の脅威からシステムを保護します。これらのツールは、潜在的な攻撃を検知し、不正なアクセスやマルウェアの拡散を防止する役割を果たします。

従業員教育

セキュリティリスクに関する従業員の意識を高め、適切なセキュリティ対策と行動を促進します。具体的には、フィッシング詐欺の認識や安全なパスワードの管理など、日常的なセキュリティ実践を従業員に教えるのが効果的です。

ソフトウェアの定期的なアップデート

ソフトウェアやシステムの脆弱性を定期的に修正し、新たな脅威に対応するために重要です。セキュリティパッチの適用は、攻撃者が利用する可能性のあるセキュリティホールを塞ぐのに役立ちます。

ソフトウェアの脆弱性が企業に招くリスクと対策方法を伝授

バックアップ戦略の実施

重要なデータを定期的にバックアップし、システム障害やデータ損失が発生した場合に迅速に復旧できるようにします。災害時でもデータを確実に復元できることは、ビジネスの継続性に不可欠です。

ダークウェブ監視の重要性と手法

ダークウェブは、インターネットの一部で通常の検索エンジンではアクセスできない隠されたウェブサイト群です。ダークウェブは違法活動の温床であり、盗まれたデータや個人情報が売買される場所として知られています。

このため、ダークウェブを監視することで、機密情報や従業員情報、自社の脆弱性情報の流出状況を確認し、迅速に適切な対策を講じられるようになるのです。

たとえば、ダークウェブ上のデータベースを監視し、そこで自社情報が売買されていないかを確認すれば、情報が漏えいしているかどうか、漏えいしている場合、その情報がどのように利用されているかを把握し、迅速に対応できます。

また、ダークウェブ上で企業の脆弱性に関する情報が共有されている場合、これを早期に発見することで、セキュリティ対策を強化し、将来的な攻撃を未然に防ぐことができます。ダークウェブ監視は、企業のセキュリティ体制を総合的に強化するための重要な手段の一つです。

ダークウェブには個人でもアクセスできますが、サイバー攻撃や犯罪行為に巻き込まれるなどのさまざまなリスクが伴うため、ダークウェブ監視に特化した特化したツールやサービスを活用しましょう。

ダークウェブ監視とは? 重要度と仕組み、ツール選定のポイントを解説

まとめ

セキュリティインシデントの概念から、その種類、発生原因、対策方法に至るまで、幅広い側面を詳細に解説しました。デジタル化が進んだ現代において、セキュリティインシデントは企業にとって避けて通れない重要な課題であり、その対策は組織全体の安全と継続的な成長に直結しています。

適切な予防措置と迅速な対応策により、セキュリティインシデントのリスクを最小限に抑え、企業の信頼性と持続可能性を高めることが可能です。セキュリティは常に進化する分野であるため、最新の脅威と対策に常に注意を払うようにしましょう。

また、現代のセキュリティインシデント対策は「セキュリティインシデントが発生する」ことを前提に、被害を最小化する対策も重要です。ダークウェブを定期的に監視すれば、迅速に自社の流出状況を確認し、適切な対策を講じられるようになります。

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